大瀬崎の海 その4

「あの酸素ボンベ1本でどれくらい潜っていられるの?」と聞かれることがある。まず、大変な間違いは「酸素ボンベ」。あのボンベに詰められているのは我々の周りにあるごく普通の空気で酸素ではない。さて、その空気をコンプレッサーでボンベ(以後タンク)に詰め込むのだが、その圧力がもの凄い。乗用車のタイヤは2気圧少々だが、ダイビングのタンクには200気圧もの高圧の空気が詰め込まれている。そんな高圧に耐えなければならないタンクを所持する際には知事に届けなければならず、5年に1度の耐圧検査も義務づけられている。タンクの容量は標準的なもので10リットル。すなわち、あのタンクの中には10リットル×200気圧の空気=2000リットルの空気が入っていることになる。それでは今までの説明で明らかになったことをもとに最初の質問に戻ると「2000リットルの空気でどれくらい潜っていられるの?」と言い換えられるが、こう質問されても「・・・」なのだ。それは、水圧に応じた圧力の空気が供給される必要があるからだ。それを調整しているのがレギュレーター。例えば、10mの水深ではダイバーに2気圧の水圧がかかり、2気圧の空気が供給されないと呼吸ができない。20mだと3気圧、30mだと4気圧だ。深く潜るほど空気の消費量が大きくなる。仮に大気圧中で2000リットルの空気を3時間で消費する人の場合、水深10mではその空気が1時間30分でなくなることになる。20mの場合は1時間、30mの場合は45分だ。ところで、さらにややこしいのが圧力下では窒素が血中に溶け込んでしまうことだ。それを溜め過ぎず、また適切に排出しないと減圧症になってしまう。そのため、深さに応じた留まれる時間の制限があり、浮上速度にも気をつけなければならない。もしも制限を超えてしまった場合は段階的に減圧しながら浮上する必要がある。経験を積んだダイバーと初心者ダイバー、男性と女性、運動量の違い等々様々な要因でも空気の消費量に違いが出てくる。「簡単には答えられないのである。」←これが答えかな。

このクダゴンベは、「その2」で触れた大瀬崎で初めて観察した個体だ。そこに留まっていられるのが10分程度の水深36m程にいたので、見つけるのに手間取っていると、ほとんど撮影できないままに浮上しなければならなかった。何週間も通ってやっとものにしたお気に入りの1枚だ。
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ネジリンボウはテッポウエビの仲間が掘った穴に住まわせてもらい、目の見えないエビはネジリンボウに周囲を見張ってもらっている。お互いに助け合っているので両者は共生関係にあると言える。共生ハゼの仲間は、見張り番を頼まれるだけに警戒心が強く、近寄っての撮影は難しい。だからこそ、こんな撮影ができたときには、してやったりと微笑むのである。
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大瀬崎に潜り出した頃は、少し大げさに言えば幻のハゼだったヒレナガネジリンボウだが、最近は普通に見られるようになった。1つの巣穴に4匹いるのをビデオで撮影したこともある。
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キツネメネジリンボウは、大瀬崎ではほとんど目にすることのないきわめて珍しいハゼだ。私にダイブマスターを認定してくれた水中写真家でもある播磨伯穂インストラクターから、湾内の水深21m程にいると教わった。とびっきり警戒心が強かったので、見つけること自体も難しかったし、ここまでの撮影をするためには、何回も通った。
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マスダオコゼも簡単には出会うことのできない珍しい魚だ。これは外海に潜り、浮上途中に偶然見つけたもの。フィルムが数枚だけだったが残っていたので、幸運にも撮影できた。
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Commented by chochoensis at 2009-11-13 20:25
=水中ボンベ=の話は、そんな風になっているのか!と驚きました。海の中の原色写真の凄さには本当にビックリしています。新しい世界なので興味津々です・・・。素晴らしい写真ですね・・・。
Commented by maximiechan at 2009-11-13 21:27
chochoensisさん、興味をもって読んでくださっているようでうれしいです。大瀬崎だけでなく、色々な海で撮影した写真と記事をこれからもずっと連載していきます。
Commented by himeoo27 at 2009-11-14 12:06
幼稚園または小学校低学年の子供が、適当に魚の絵を描き
クレヨンで色が重ならぬように全ての色を出鱈目に塗った
ような前衛的「マスダオコゼ」は吃驚です!
海の中にも驚くほど多様な生き物が生息しているのですね。
Commented by maximiechan at 2009-11-14 18:07
himeooさん、上手い表現に感心しました。
マスダオコゼの体色は個体差があるようです。私はこの個体しか出会ったことがないけど、図鑑の写真などで見ても、こんなにカラフルな個体はいません。
by maximiechan | 2009-11-12 23:38 | 水中 under water | Comments(4)

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